終戦のローレライ(著・福井晴敏)

終戦のローレライ 上

第24回吉川英治文学新人賞、第21回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞受賞作。

太平洋戦争中、17歳の折笠征人と清永喜久雄は潜水艦任務に召集される。任務内容は特殊兵器の回収。それは極秘裏に進められている任務だった――。

戦争に関する圧倒的な情報量の中、描かれるストーリー。じりじりと丁寧につむがれる物語。そこで征人ら若者が清新な推進力となり、話を動かしていく。情報の積み重ねばかりでは世界観も話も重くなりすぎてしまうのだろう。征人らの見せる若さはすがすがしい。

細かなディテールに支えられた潜水艦戦は大きな見所。潜水艦の戦いにここまで魅かれるとは思わなかった。多様な戦い方を潜水艦に行わせ、それを描ききっていて見事。

ただ、キャラの(重要な)心情を説明してしまうこと、登場人物が予測するという形で第二次大戦後の世界(冷戦等)を多く語ってしまうことは残念。個人的にはそこまで説明で埋めてしまわないでほしかった。

単行本だと上下巻で合計約1050ページの大作。
「戦争で生き残った者はどう生きるべきか」という終章でつきつける問いが印象的。

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週刊少年ジャンプ28号感想

家庭教師ヒットマンREBORN!
 ツナの力お披露目戦闘。
 あっさり1週で勝利ーってわけにはいかなかったか。
 他のメンバーはいまどんな感じなんでしょう。まあ作中時間はほとんど経ってないだろうし、移動中だったりするのかな。

NARUTO -ナルト-
 カカシやダンゾウに火影OKが出るとは、火影になる条件ってなんだろう? 割と政治的なのか?
 これまでの火影には何かしら術の面で圧倒的なところがあったと思うけど。

ONE PIECE
 マゼラン強っ! イワンコフとイナヅマが負けたのは心が痛かった……。でも決してかませ犬にはなっていない。理由としては①これまで積み上げてきた描写がある②イナヅマは瞬殺だったのかもしれないがイワンコフはある程度戦ったと思われる③イナヅマは最初から実力差を感じている④イワンコフ→イナヅマと、より強い方から負けている。
 マゼランはエースを乗せた船を出航させる準備ととのえたのか。目の前の事態だけに対処しているわけでないマゼラン、仕事できる人だ。
 これからはひたすら逃げる(そして追いかける)展開が予想される。出航してしまった場合はジンベエが活躍するのかも。

べるぜバブ
 邦枝は男鹿とバトルするわけでなく、レディースの恋愛禁止の規則にひっかかるのか。そしてそこに男鹿が助けるみたいな。
 ここで東条を登場させたのは単なる伏線なのか、それとも邦枝編を一旦休止するのか。なんにせよ邦枝編と東条編は同時期に処理して、石矢魔高校関係は終わりにするつもりなのかも。
 しかし未だにヒルダに魅力を感じる古市はタフだな。

BLEACH
 なるほど、そりゃ砕蜂は卍解しないわ。
 一撃必殺系の技だけど、必ず命中するんだろうか? 単に異常な破壊力なのだったら大前田危ない。

AKABOSHI -異聞水滸伝-
 はったり満載な作画はこの作品の個性になりうると思うけど、あまりに連発されると疲れる。
 いまの展開だと2週はかかりそう。戦闘はひとまず戴宗が勝つとして、その後は何かあって王進は替天行道に加わる方が民のためになると認識→林冲に町を任せて自分は替天行道へ、なんてありうるけど、この作品はどれだけ原作に沿うのだろう。

詭弁学派、四ツ谷先生の怪談
 語りで犯人を追い詰めていくとは新鮮。推理ものの解決編パターンの変型かもしれないけど。
 絵柄も演出も話にあってる。
 ただ、手を加えないと連載向きではない気がする。

黒子のバスケ
 古武術は特殊だからこそ対処法があるというのは説得力があった。
 2年生のチームワークといい、地道に説得力を積み上げた試合でした。
 黒子って味方には見えてるのかな? 見えてないと突然ボールが曲がって自分の方に来る感じだ。

バクマン。
 恋愛パートはあっさり終了。写真集は断りつつも亜豆は成功していくのでしょう。
 サイコーとシュージンは、第7話のネームを変えるにしても、変更可能にしただけ。まだどうして現在の順位にとどまっているのか、問題を解決するにはどうすればいいのか、というところまでいっていない。ファンレターや第1話のアンケート(今後の展開の希望等)はまだなのかな?

トリコ
 マスタージュンに勝利するだけの回。
 しかしマスタージュンは生身の方が強いみたいなので、次トリコが苦戦しても不思議ではない。
 トリコとココ・サニーの間には実力差ができたか。

SKET DANCE
 兄弟ネタをギャグ回にいれてきてくれて良かった。しかもそこに今回焦点をあてたおかげで、今後兄弟ネタをちょこちょことしたところでも挟みやすくなると思う。
 しかし誰か幕かける前に止めようよ。

アイシールド21
 自分達から延長戦に入った展開は青春してて良い。爽やかだ。対立していたような両者が最後はアメフトが好きというところで一致。
 最後までセナはパンサーに勝てなかったな。この作品らしくない。実は延長戦で勝ったってわかるのかもしれないけど。身体能力の差。リアリティを守るギリギリのラインかな。それとも身体能力に差があってもアメフトは勝てるってことを示したいのかもしれない。
 いよいよアイシールド21も終わりかー。きれいにまとまった作品となるのでしょう。

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週刊少年ジャンプ26号感想

べるぜバブ
 東邦神姫も完全にコメディタッチに。
東邦神姫篇だけシリアスになるよりこっちのがいいな。
 不良ではあるけど正義感の強い邦枝。
男鹿に「騙された!」って逆上するも、助けられるか実はいい人な要素見るかして、好印象をもつようになる展開とかベタだなあ。
まあベタでいいんだけど。

ONE PIECE

 ハンニャバル、副署長の意地を見せる。
副署長の面子を保ちつつ、スピーディに展開していてすばらしい。
一蹴されてたら何で副署長になれたんだってなるし、長く戦ってたら冗長だったろうし。
 黒ひげはヤミヤミの力で一気に下りてきたのか?そんなこともできるのかなー。でもシリュウとマゼラン瞬殺ってのも考えにくいし。
 サンジは短期集中表紙連載で処理するわけか。そこまで大きな転機はないってことか。

AKABOSHI -異聞水滸伝-
 テンポが良い。
趙能の話だけで終わってたら、戴宗のキャラを強調するだけの話だったけど、最後にヒキ(替天行道のメンバー?)を持ってきて良い感じ。
趙能の話も、「謝ってすむなら~」のくだりで替天行道の立場強調して良くまとまってると思うけど、やっぱりそれだけじゃ物足りない。
 この漫画が生き残れるかどうかは、まずは戴宗が読者に受け入れられるかどうかが大きい気がする。先週より酷い人になってる印象。

BLEACH
 うーん、いつまで続くんだろ。
 ニ番隊の隊長・副隊長の関係性は好き。あまりカッコ良くならない大前田がいい味だしてる。

黒子のバスケ
 1年ふたりを休ませることに。
これで次の試合に勝つ説得力が少しは出た。
 しかしこれで先輩たちが勝ったら、よっぽど先輩たちレベルアップしたってことだよなあ。たぶん回想シーンでどういうことしたか補われるんだろうけど、それにしてもなあ。
 油断しない正邦には好感。だからこそ誠凛が勝つ説得力を描くの難しいと思う。

トリコ

 グルメ細胞を過去の偉人と繋げてきて、物語世界に深み。自食作用についても丁寧に説明されている。こういう配慮がストーリーの臨場感・説得力につながってる。
 トリコに惨敗してしまっていないスタージュン。しかも生身のが強いわけか。
 来週は普通に肉たべるのかな? そしてひとまず勝利という展開になっていくんだろうか。それだと普通すぎるか。個人的には美味しい食べ物はしっかり味わってほしいところだけど、状況的に難しいな。

めだかボックス

 めだかの人間味を見せる回。これでひとまずめだかのキャラはたておわった印象。
 来週も1話完結形式でめだかボックスに応えてくんだろうか。話に広がりがあってもいい頃だと思う。

PSYREN -サイレン-
 タイムパラドックスも取り扱われることが判明。
 ネメシスQの正体が明らかになるわけか。急展開だ。「お前」ってアゲハが言ってるということは祭ではないのか。

バクマン。
 蒼樹さん、意外と普通にいい人だった。もっとマイワールドな人だと思ってたけど、それは単にプライドゆえだった。
 中井さんの熱意は漫画に対するものの方が強いそうだけど、やっぱり蒼樹さんへの熱意が強く見えてしまう。たぶん「hideout door」がそんな魅力的な作品に描写されていないから、そして中井さんの恋心の方がクローズアップされている印象があるから。
 今回中井さんがした暴走に共感や感動はしない。好感度あがるのはそこで折れた蒼樹さんの方。ギャップを見せているわけだから。まあそういう意図なのでしょう。
 しかし漫画を描きながら他の人のことを心配できるとは、サイコーとシュージンも成長したってことか。

アイシールド21
 試合はついに最終局面。いまいち盛り上がらないのは何でだろう?アメリカが結構弱いことや、描いている要素が多岐にわたりすぎてるってことが原因だったりするのかな。

ぬらりひょんの孫
 祖父と祖母の馴れ初め。
 おじいちゃんカッコいいなー。カリスマ性ある。でもわかりやすくするためとはいえ、若いぬらりひょんを両方同じ風貌にしなくていいのに。

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週刊少年ジャンプ25号感想

AKABOSHI -異聞水滸伝-
面白い。
画力すばらしいし、演出力もすばらしい。
主人公もジャンプによくあるパターンではないし、新鮮味もあるのでは。
面倒くさがりやながらも、ボスには忠実でありそうなところが良い。薄っぺらなキャラじゃなくしてるし、ボスへの期待も持てる。
「流星」のように異名をもつ人もこれからたくさん出てくるんだろうし、人気でそうだなあ。そう思う自分は古いのか。

ONE PIECE

いやー、敵も強い。すばらしい。
LEVEL2の非常事態を一気に鎮圧してしまうマゼラン署長は頼りがいあるね。ハンニャバルがああなるのもわかる。
1週にして実質的に生き残っているのは本当の強者ばかりに。
バギーたちはこれから絡んでこれるんだろうか?
黒ひげは謎。黒ひげひとりならともかく、黒ひげ海賊団全員だとシリューひとりじゃどうにもならないと思うけどなあ。
インペルダウンの状況説明図でもイワンコフの顔がでかくて面白かった。

めだかボックス
いまさら思ったけど、タイトルは目安箱のことを指してるのか。
推理の仕方も解決法も説教も徹底してずれているのがいい。
新聞全部暗記してるって西尾維新キャラっぽいかも。

トリコ
そっちかー。
ナルトの九尾や一護の虚化みたいな方向性だろうか。
トリコのGTロボ否定は興味深い。
それなりの危険を冒して手に入れた食物だからこそおいしい。
危険を冒して狩ろうとしてこそ食べる相手への礼儀。
というような感じだろうか。
トリコの信念なんだろうな。

黒子のバスケ

いい試合になってるのはいいんだけど、先週の流れからどうしてここまで巻き返せるのか謎。
メンタル面さえしっかりしてれば、実力的には大差ないってこと?
まあスポーツだし勢いとかあるだろうけど。そして実力差ありすぎても次の試合の描写困るだろうけど。
あと、ミスディレクションとか言われてるけど、存在感薄いのはそれはそれで才能だと思う。

PSYREN -サイレン-
次に現代に戻ったら影虎とマツリも生き残れるように画策するのかな。
禁人種に改造されてる可能性もあるなあ。それは見たくないけど。

アイシールド21

才能が平凡でも努力し続けた者と諦めてしまった者の対比。これは良かった。
でも最後にセナの見せ場を無理矢理いれる必要はあったんだろうか?
今週のテーマがぶれる気が。巻き入ってるのかな。

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いのちのパレード(著・恩田陸)

いのちのパレード

「無国籍で不思議な短編集を作りたい(あとがきより)」という思いから生まれた短編集。
恩田陸という作家のイマジネーションの豊かさに感服。

地面から手が生えてくる村、蝶を用いて死者を捜す人、当たりたくない宝くじ、ときにかたつむりが大量発生する町、ミュージカルを行いながら現実を生きる出演者、文字通り走り続ける国、リアルすごろく。
魅力的なアイデアが次々と読める。

アイデアもいいけど、アイデア勝負でもない。
恩田陸の文章力のなせるわざか。
表題作に見られる、これまで地球に存在した全生物が同じ方向へと進んでいく様子は特に秀逸。この描写だけでこの話は十分といえるような雄大な光景だった。

あとがきで恩田陸本人は短編小説が苦手と言っている。だが、むしろショートショートが苦手なんじゃないかな、と思う。
きっとオチのインパクトで話を閉じるべきタイプの作家ではない。
それはおそらく情報伝達に焦点があてられた文体でないから。独特の雰囲気を醸し出す文体。
最後に急転直下の展開を持ってくるならある程度エピローグのようなものをつけた方が、エピローグ的要素をつけないならその展開に至るまで十分に煽った方が、恩田陸の文体には合っていると思う。

個人的には、恩田陸の特性がどこにあるのか感じることのできた一冊だった。

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週刊少年ジャンプ24号感想

めだかボックス
 西尾維新が原作を務める新連載。
 読み切りよりは良かったんじゃないかな、と思う。
 しかし西尾維新、少年漫画を書くことを意識しすぎてる? カタルシスの持っていきかたが西尾維新らしくない感じ。戯言シリーズしか読んだことないけど。
 小説だったら同じストーリーでもっと面白いんだろうか。
 西尾維新のつくりだすキャラは漫画的だけど実は小説の中の方が映えるのか。非常に漫画的なキャラが小説の中に生きて存在している異質性?
 小説はやはりストーリーだけで出来ているわけじゃないし、漫画もまた然り。

ONE PIECE
 いやー、気持ちいい展開!
 クロコダイルも味方になるとカッコいい。
 ルフィの引き起こしている流れが止めようのない流れなんだってことを感じる話。
 バギーが解放した囚人も結局はルフィの流れにのみこまれているわけで。
 ルフィはこの世界を動かしていく人物なんだなあ。

BLEACH
 十刃と死に方を絡めてきたのはカッコいい。
 でもその死に方が戦闘中に明言されるのはこのバラガンだけ?
 もっとピンチになって、仮面の軍勢登場な流れでしょうか。

黒子のバスケ
 いやー、人気あるなあ。
 正邦には頑張れば勝てるかもしれないけど、次の試合がな。
 去年ボロ負けした相手に2試合連続で勝つには相当な説得力が必要かと。
 しかも秀徳のが強敵のような描写されてるし。
 どうするんだろ。

トリコ
 スタージュンが出てきてからの緊迫感、素晴らしい。
 トリコ側の誰かが死ぬ様子も想像できないし、スタージュンが簡単に負けるとも思えない。
 先が見えない。
 リーガルマンモスが何かするか、スタージュン本体側で何か起こるか。
 トリコ側が勝つ展開は難しいかなあ。
 例えばいまのサニーとココが助っ人に入って、満身創痍でトリコたちが勝っても、個人的にはスタージュンの株が落ちる。
 それほどまでの脅威をスタージュンに感じてるってわけか。

バクマン。
 打ち切られる方向性かな?
 理由としては、小河と港浦の『疑探偵TRAP』評、しかも第1話~第3話はもう変えられないこと(いまのふたりには無理矢理変える気力もないだろう)、仕事場の雰囲気。
 でも人気は出なくてもクオリティの高い漫画ではあるのだろう。
 だから打ち切られそうになったとき、新妻エイジが打ち切り権を使って他の漫画を終わらせるってこともありうるかな?
 後から面白くなっていくタイプの漫画についての議論も交わされていたことだし。

べるぜバブ
 結構人気があるんだろうか。
 男鹿の告白に反応してるってことは、邦枝がレディースのトップでも恋愛感情抱くことは十分にありうる。
 まあ東邦神姫を全員倒すだけってのも面白味がないし。
 『バリハケン』みたいな展開でもあるけど。

PSYREN -サイレン-

 なんで最近の展開で人気が出ないんだろ。
 ウケが良さそうな展開なのに。
 なんかもはや現代に帰ることなんて余裕な雰囲気。
 未来のエルモア・ウッドの子供達とも会っちゃったことだし、現代に戻って未来を改変することに葛藤おぼえたりして。

アイシールド21
 高見が投げることはバレバレではなかったのかな?
 これまでの騙しあいでアメリカ側に「必ずしも高見ではないかもしれない」と考えさせたか。
 あとドンはラインで抑えることができてたってことか。
 いい試合だけど、実力差を乗り越えていい試合に持ち込んでるというよりは、普通にいい試合してるだけなんだよなあ。
 絶望的な実力差は最初からなかった感じ。

フープメン
 こんな掲載順位に。
 展開の遅さが原因かなあ。
 あと、通訳という設定が活かされてないと思う。それとも活かしてる場合じゃなくなったのか。

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『つきのふね』(著・森絵都)

つきのふね (角川文庫)

なんていうか、不安定な作品だと思った。

親友と話さなくなり、学校で居場所のなくなっている少女。
不良グループから離れられず荒んでいく少女。
人をつけまわすのが趣味で、何にでも首をつっこみたがる少年。
宇宙船を設計する任務を与えられていると思ってしまっている青年。

この4人が中心となって動いていく話。不安定な4人。
ストーリーもどこに焦点をあてているのかよくわからなかった。
なんだか気持ち悪さをおぼえながら読み進めることに。
ただし、読みにくいということは全くもってない。

いま考えると、『つきのふね』は人の心の内にある苦しみに焦点をあてた作品なのかもしれない。特に人とのつながりという面において。
しかしあの4人を中心に話を進めるとは、人とのつながりに関する苦しみを描くにしても、特殊だと思う。狙っておこなったことかどうかはわからない。
もっと後に書かれた『DIVE!!』の洗練された様子は『つきのふね』には見られない。
でも両作品とも人の心を描こうとした作品ではないかと思う。そういう意味では共通しているのかもしれない。

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『DIVE!!』(著・森絵都)

DIVE!!〈上〉 (角川文庫)

水泳の飛込競技を題材にした成長物語。
文庫版は上下巻の全2巻。
平凡な仮定に生まれながらも天賦の才を持つ坂井知季。
伝説のダイバーを祖父に持ち、海で飛び続けてきた沖津飛沫。
飛込競技のオリンピック選手の両親をもつ冨士谷要一。
この3人の中高生を中心に話は進む。

ほとんど止まらずに読みきってしまった。
上巻360p、下巻373pの大作ながら、その長さを感じさせない。
性格も強みも3者3様の天才たち。それぞれの歩みを追うから全員に感情移入してしまう。
話のテンポもいい。もったいぶりすぎない。
3人の周囲を固めるキャラクターも魅力的。それぞれに人生があり、ご都合主義なキャラクターになっていない。
読後感はすっきりとしている。

飛込競技では、飛込みから入水までたった1.4秒。
1試合で何度も飛ぶとはいえ、1回1.4秒に凝縮される演技。
一瞬の演技時間の心理描写は作中に全然登場しない(もしかしたら少しあったかも?)。
これまで積み重ねてきた歩みがそのまま演技にあらわれる、ということだと思う。

色々なことがあっても、最後は飛んで演技をするだけ。しかもその時間はたった1.4秒。
(描写上は)何も考えず、1.4秒に自分の歩みを凝縮する。
それを描くストーリー。
だからこその爽やかさだろうか。

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【新釈】走れメロス 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇

森見登美彦が『山月記』、『藪の中』、『走れメロス』、『桜の森の満開の下』、『百物語』という近代日本文学作品を自身の世界観の中にそれぞれおとしこんでいる。

森見登美彦の世界観のもと話は展開されていくから、別に各作品のオリジナルを読まなくても楽しめはする。しかし、読んだほうがいっそう楽しめるだろう。各作品とまったく違うことを書いているのではないようなので。
自分自身、読んだことのない作品もあり、そうなるといつもと少し違うけれど、森見登美彦の話として受けとってしまう。

5篇収められているが、どれも「ああいう話だったな」と思い出せる印象に残る話だった。
『走れメロス』のアレンジはすごい。もしかしたら他の作品のアレンジもすごいのかもしれないが、『走れメロス』は解釈をああ捻るだけで一気に森見ワールドになってしまうのか。すごいなあ。

やはり別作家の作品を下敷きにしているため、いつも通りでない森見登美彦が読める。
いつもの森見登美彦を期待していると肩透かしを感じるところもあるかもしれず、賛否両論かもしれないが、そういう作品があってもいいじゃないかと思う。
こういう話を書いたことがきっかけで作風が広がれば良いことだろうし。

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悲しみよ こんにちは(著・フランソワーズ・サガン 訳・朝吹登水子)

悲しみよこんにちは (新潮文庫)

フランソワーズ・サガンが十代のときに著した処女作。

勝手に読みにくいのかなあ、と思っていたけれども、割と一気に読めた。
若いときにしか書けないような作品かもしれない。

通訳・翻訳を学んできている者として、翻訳についての感想を述べようと思う。
といっても原文にあたっていないどころか、フランス語も読めないため、かなり印象論になるけれど。

きっと原文はフランス語ならではの文章なのだろう。
訳はなるべく原文の表現をいかそうとしたのではないだろうか。
「意味が伝わればいいからわかりやすさを重視しよう」というような訳ではなく。
原文をなるべくいじらず、サガンの感性が日本の読者にも直接的に伝わるようにしたのではないだろうか。
訳者には「ストーリーよりもサガンを読者に伝えたい」という意図があったと推測する。訳者あとがきでもサガンの文体について言及していたし。
だからというわけでは必ずしもないだろうが、「ああ、翻訳だな」と思える箇所はある。
しかし「こんな日本語あまりにも読みにくい」というような文章にはなっていない。というか「翻訳調」の箇所がマイナスに作用している印象はない。
むしろ訳者の意図が自分の推測した通りであるならば、この作品でなされた翻訳は全体として成功していると思う。

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